抄録
公物概念の形成と管理の確立に関して,海岸について管理面の歴史的な変遷を分析することにより,海岸に位置する地域の管理の成立過程を把握するとともに,自然公物である河川と海岸の管理に関して法制度面から歴史的な変遷を比較分析することにより,両者の管理に関する制度設計における生成過程が異なっていることを明らかにした.またこの相違点が,土地所有権・土地利用といった陸域からのストレスと,場の変化・水域の利用といった海域からのストレスの関係によって導き出されたものであることを整理した.その上で,今後の沿岸域管理の構築に向けては,公物管理に関する制度設計における陸域と海域との位置関係を踏まえ,場の変化につながる行為規制・海域の利用調整を主とした環境管理により重きを置いた具体的な制度設計が必要であることを示した.