抄録
有明海湾奥西部海域の夏季における短期的な底質変動を明らかにするために,2011年夏季に水質および底質調査を週1回行った.貧酸素水塊は,淡水流入,低水温・高塩分水の貫入,気象条件によって形成と消滅を繰り返した.硫化水素は貧酸素水塊が形成することによって生成し,台風の影響による時化によって低濃度化した.また,酸化還元電位(Eh)が-180mV程度の領域と高い硫化水素濃度が見られた領域とは対応していた.高い硫化水素濃度が見られた堆積物のpHは7.2程度であったことから7月下旬のサルボウの斃死要因は,貧酸素水塊の形成と硫化水素の生成であることが示唆された.