2012 年 68 巻 2 号 p. I_1227-I_1232
水産資源の維持・増大と漁業経営の安定化に資するため,各地で漁場整備事業が実施されているが,こうした事業の定量的な効果算定を行うためには,継続的なモニタリング調査等が必要となり,費用面からも定性的な評価にとどまることが多いのが現状である.本研究では,HEPを応用して構築した予測モデルをマダイの漁場環境評価に適用しようとして以下の結論を得た.餌料環境のポテンシャルが向上し,マダイの生息環境は改善したことから,マダイの漁獲量は増加した可能性が示唆された.マダイの全漁獲量のうち約2割については,漁場造成に伴う餌料の増加が寄与する可能性が示唆された.本研究により得られたHEPを応用して構築した予測モデルは,評価海域の漁獲量の傾向だけでなく,マダイの餌料環境に着目した漁場環境評価に活用できることが示唆された.