抄録
本稿では,秋田港の大浜地区生物共生型実験護岸(以下,実験護岸)における初年度のモニタリング調査結果を報告するとともに,ハタハタの産卵場所として維持管理していく可能性についても言及した.
調査の結果,実験護岸周辺は表層の塩分が低く,水深に伴う光量子の減衰が顕著という河口域の特色の下で,付着珪藻,アカオビシマハゼに代表される根魚,物質循環に寄与するとされるムラサキイガイやマナマコなどの生息場所になっていることが分かった.実験護岸前において,抱卵しているハタハタは採集できたが,護岸での産卵は確認できなかった.この原因は,産卵に適した大型海藻がほとんど出現しなかったことにあると推察された.実験護岸周辺の塩分と光量子が大型藻類の成長を阻害している可能性があり,このような場合の対策として,大型藻類を人工物で代替して産卵場としての機能を創出する方法が考えられた.その際には,事後のモニタリングによる効果の検証等を含めた維持管理が必要であると考えられた.