2013 年 69 巻 2 号 p. I_1018-I_1023
有明海湾奥西部の干潟縁辺域を中心に形成する貧酸素水塊の経年変動特性と潮流との関係を明らかにするために2005年から2012年の夏季に流速および底層DO等の水質の現地観測を行った.流速の調和解析を行った結果,いずれの年も10分潮のうちM2潮が卓越しており,東西成分よりも北方成分が卓越していた.各成分を合成した潮流振幅(M2)は2009年が大きく,2006年と2012年が小さかった.平均底層DOは2006年および2012年が最も低く,2009年が最も高い値を示した.潮流振幅(M2)と密度差,潮流振幅(M2)の3乗と平均底層DOのとの間には相関関係が見られたことから,有明海湾奥西部の干潟縁辺域では,生物化学的作用のみならず淡水流入による河口循環流の形成とそれによる潮流振幅の変化が貧酸素水塊の形成に重要な役割を果たしていることが示唆された.