抄録
港湾水域は,多くの水生生物にとって貴重な静穏域であるが,閉鎖的で水質・底質などの水域環境が悪化しやすい側面を抱えている.このような水域環境の悪化の対策として,福井県敦賀港では貝殻を使用した水質改善礁を設置している.発表者らはこの水質改善礁の水質浄化効果を定量的に評価するため,四季を通じてテストピースを引き揚げ,水槽内に静置した後珪藻を添加し経時的な変化を調べた.結果,水槽内の珪藻細胞数や有機態炭素量は添加直後から減少し,目視でも徐々に水が透明になっていくことで水質浄化効果が確認された.水温の低い季節ではその能力は低下したものの,年間を通じて水質浄化効果は発揮されていた.また,この水質浄化の経済効果は下水処理費用に換算すると水質改善礁16基で年間455万円に相当すると試算された.