抄録
近年,港湾構造物を建設する際にも周辺の生態系に対する配慮が望まれ,そのために様々な取組が行われている.カキ等の貝殻を活用した基質は,多種多様な無脊椎動物の生息基盤として優れ,海藻類の着定基盤としても高い機能を発揮する.本研究では,無脊椎動物の幼生や海藻類の胞子が貝殻基質に着生しやすい要因の一つとして,貝殻基質周辺の流れに着目し,水理実験により基質周辺の流れの可視化と流速分布の測定を行ったものである.実験の結果,水中を漂う胞子や幼生は流れが貝殻基質に当たることによって内部に取り込まれ,複雑な内部空間を通過する過程で貝殻表面に付着しやすくなることで,無脊椎動物の着底場や藻場の着定基質としての機能が促進されるものと推定された.