抄録
東日本大震災以降,数値波動水路を用いた津波解析が数多く実施されている.津波のような長周期波に対する数値シミュレーションを行う場合,エネルギー減衰帯と開境界による無反射境界条件処理が通常波のように有効に機能しないことがある.本研究では,線形長波理論を用いて理論的な検討を実施し,エネルギー減衰帯内では波数の変調が生じ,開境界条件であるSommerfeldの放射条件を大きく逸脱する可能性を示した.また,長周期波は,エネルギー減衰帯内で反射を生じやすいことを指摘するとともに,これらについて,モデル方程式を用いて反射率の評価を行い,本研究の範囲ではエネルギー減衰帯における反射波の発生が顕著であることを確認した.また,津波のような長周期波に対しては,エネルギー減衰帯を用いず,開境界処理のみを行うほうが良いことを指摘した.