2013 年 69 巻 2 号 p. I_904-I_909
鹿児島県では深水層における低酸素化,無酸素化の拡大は湖底表層堆積物中の窒素やリンの溶出を助長し, さらなる富栄養化につながるという懸念から,定期的に池田湖の水質調査を実施している.しかしながら底質とくに湖底堆積物の化学分析についての報告は少ない.そこで本研究では年間(15か月)を通じて採取した底泥試料を用いて,底質汚濁の化学的指標の一つである硫化物含量を基に, 池田湖の底質の季節変化を水温躍層の形成過程の観点から明らかにすることにした.その結果, 硫化物濃度は成層期の終わりに極大となり, 逆に循環期には低下することがわかった. また, 近年の温暖化の進行により湖水の上下混合の程度が弱まることによって, 湖底の硫化物濃度の上昇を起こす可能性を示唆した.