抄録
東北地方太平洋沖地震では,防波堤を越流した津波により背後のマウンドおよび地盤が洗掘を受け,支持力不足が原因で多くの防波堤が倒壊した.本研究では,過去に行われたL型防波堤の水平載荷実験を個別要素解析で再現するとともに,背後地盤が洗掘を受けた状況をモデル化し,洗掘孔の距離と洗掘深さを変えた条件で数値実験を実施した.その結果,洗掘孔が防波堤の近くに発生する場合,水平抵抗力が著しく低下することが明らかとなった.要因として基礎根入れ部地表面付近の水平土圧の低下を示した.また,根入れ部の防波堤背面から伝達される力は,水平よりおよそ25度下向きに発達することがわかった.この結果より洗掘孔による支持力低下の影響を小さくするためには,洗掘孔が防波堤背面から根入れ深さの2.3倍以上離れている必要があることを示した.