抄録
鋼矢板岸壁に局部腐食が発生した状況を想定し,腐食孔からの埋め立て土砂の吸い出しを数値解析により検討した.その結果,腐食孔近傍の地盤が膨張状態にあるときに地盤表面の接線方向流速の大きさが最大となる位相があることが判明した.そのため,その位相にて埋め立て土砂の吸い出しが生じ始める可能性が高いと考え,接線方向流速の大きさの最大値とそのときの地盤の体積ひずみに着目した.そして,(1)腐食孔が静水面と同じ高さにあるとき,(2)腐食孔が没水状態にある場合は,腐食孔の位置が静水面に近づくか,作用波の波高が高くなるか,周期が長くなるほど,(3)腐食孔が没水状態にあるかに関わらず腐食孔が大きくなるほど,流速の大きさの最大値が増加し体積ひずみが減少するために,埋め立て土砂の吸い出しが発生する可能性が高いことを明らかにした.