抄録
港湾構造物の中でも桟橋上部工は,塩害による早期劣化が維持管理上の大きな問題になっている.本研究では,桟橋下面での砕波の発生回数すなわち海水飛沫の発生量を低減する目的で,実際の桟橋において,設置高さの異なるカーテンウォール状の前垂れを複数配置した.その背後の梁と床板にコンクリート供試体を設置し,海洋環境下での曝露を2年間行い,曝露開始1年目と2年目に曝露供試体を回収した.曝露供試体の塩化物イオン濃度測定結果から,前垂れ設置による塩分供給量の低減効果について検討を行った.今回の現地実験の範囲では,概ね潮汐の累積相対度数を0.8より小さくなる位置に前垂れ下端を設定すれば,塩分供給量の低減効果が得られることが分かった.