2015 年 71 巻 2 号 p. I_850-I_855
鹿児島湾奥北部に位置する重富干潟を対象に行った水質観測の結果,干潟北東部海岸線付近において塩分が沖合海域よりも低いことから,地下水が海岸線付近で湧出し海水と混合している可能性が示された.そこで,干潟に直接影響する河川流域を対象に,水収支を巨視的に求めた結果,流域降水量17,556万m3に対して,河川8,697万m3(50 %),地下水6,771万m3(39 %),蒸発散2,088万m3(11 %)程度となった.下流域の地下水位は河川水位と同程度の水位であり,現地観測の結果,干潟海岸線では常時D.L.+1.5 mを超える地下水位が確認された.またリン酸態リン(PO4-P)は河川と同程度の濃度であることが分かり,海岸線から湧出する地下水は,干潟の栄養塩供給に大きく寄与する可能性があると示唆された.