抄録
陸上構造物に作用する津波波力を評価するためには,津波の浸水深と水深係数を知る必要がある.従来,水深係数として3が用いられてきたが,東日本大震災後の現地調査により,海岸線からの距離により低減が可能であることがわかった.しかしながら水理学的なメカニズム,適用の合理性については課題が残る.
本論文では,初めに既往の研究成果から,水深係数がフルード数に依存して決まることを示す.次に,簡便に入手可能な津波ハザードマップの浸水深に関する情報から,エネルギー線法によりフルード数の変化を表現する方法を提示する.さらに,想定縮尺1/100のフルード相似則に従った水理模型実験を実施し,評価方法の妥当性を確認した.最後に,エネルギー線法により,海岸線からの距離,粗度係数,標高をパラメータとしてフルード数の変化を評価し,地表面粗度が粗いほど,海岸線からの距離が大きいほど,地盤標高が高いほど,フルード数が低減することを確認した.