2016 年 72 巻 2 号 p. I_193-I_198
南海トラフ地震よる津波により大量の津波漂流物が発生し,火災などを引き起こすことで被害が拡大する恐れがある.しかし,広域にわたる津波漂流物のリスクを評価する手法は未だに確立されていない.そこで,津波漂流物のシミュレーションを行う為に必要なデータセットを作成することを目的として,東日本大震災における津波漂流物の漂着位置と量の推定を行った.
津波漂流物の位置は空中写真等から判読し,重量は自治体などの報告書等から収集した.津波漂流物の漂着面積あたりの重量には地域によってばらつきがあった.陸前高田市,気仙沼市,亘理町を例にとり,その要因を調べたところ,海岸堤防などが引き波時に津波漂流物の海への流出を防ぐ効果があり,津波の遡上距離が長い地域では,津波が減衰し,広域にわたり分布する傾向となると示唆された.