抄録
鋼構造物表面を冬期間に海氷が損耗させる条件にあれば構造物表面が繰り返し活性化されることで腐食摩耗が促進される.結果として氷海域では通常の海域にある鋼構造物に比較して摩耗速度が大きくなる.実際,オホーツク海沿岸の導流堤鋼矢板に被害が発生した.このため,室内及び現地で錆層を施した鉄供試体を用いた低温室内での滑り摩耗試験を実施することで,各種因子(介在砂,載荷圧力,氷温)が摩耗率に与える影響を検討した.介在砂が定常摩耗時の摩耗率に与える影響が比較的大きく,さらに,そのばらつきも大きいことが示された.また,介在砂が存在しない場合には定常摩耗時の摩耗率は室内と現地で錆層を施した鉄供試体間に整合性がみられ,さらに,Holmの摩耗式が成立する可能性も示唆された.