抄録
水底の土中に含まれる有機物の分解によって生産される栄養塩や硫化水素等は,溶存態の形態で土中に蓄えられる.この栄養塩等は,温度等の土中環境や有機物の形態などの諸条件によって土中での栄養塩等の生産量が変化するほか,土中から水中への溶出過程や水中の躍層の形態等の拡散に影響する水域の諸条件によっても変化する.本稿では,汽水湖の中海を対象として,これらの諸条件の異なる場の水底土と水の栄養塩の分布状態を推定し,栄養塩等の生産に影響する土中の有機物の形態や水中への季節的な溶出特性,水温の鉛直分布の変化から栄養塩の分布形態の評価を行った.この結果,水底土中では有機物分解速度に影響する不安定な易分解有機物の影響や積算温度が,水中では水温躍層の季節変動が栄養塩等の溶出や濃縮を支配しているものと推察された.