2016 年 72 巻 2 号 p. I_718-I_723
徳島市沖洲地区にある人工海浜は,埋め立てられる既存海浜の代償措置として造成されたが,既存海浜の底生生物相を再現できていなかった.決定的な違いはホソウミニナの有無であり,その原因は沖洲人工海浜で確認されている「沈み込み現象」によるものと推察された.筆者らは「沈み込み現象」の発生原因として,ニホンスナモグリに着目した.その結果「沈み込み現象」は,ニホンスナモグリの生息域のみで発生していること,加えてニホンスナモグリを排除すると「沈み込み現象」は発生しないことを示した.また,ニホンスナモグリはホソウミニナの生残に負の影響を与えることも分かった.しかしニホンスナモグリを排除することで,底生生物相が貧弱になる結果も示されており,ニホンスナモグリが干潟生態系へ与える影響は極めて複雑であることが示された.