抄録
有明海及び諫早湾における濁りの指標項目の経年的な傾向と,平均潮位の上昇等の潮流速の低下要因との関係について検討した.有明海では,1980年代から2000年代にかけて有明海を含む九州一帯でみられた平均潮位の上昇に伴い潮流速が低下したことで,湾央部・湾口部で濁りが低下し,透明度が上昇していると考えられた.また,その変化は,ノリ漁期の網の設置による潮流速の低下に伴う透明度の変化と比べて大きいことが示唆された.諫早湾では,湾央部・湾口部の濁りは有明海湾奥部・湾央部と概ね類似した変動を示しており,この変化は有明海同様に平均潮位の上昇による寄与が大きいことが示唆された.一方,諫早湾湾奥部では,平均潮位の上昇による濁りの変化に加え,1997年に設置された潮受堤防による変化が示唆された.