2017 年 73 巻 2 号 p. I_456-I_461
補強土壁工法は優れた耐震性を有するため,擁壁等の陸上工事において広く用いられているものの,港湾工事においては未だ適用されていない.本研究は,補強材の効果を港湾の矢板式係船岸に適用することで,従来の控え式矢板と比較して安価で優れた耐震性能を有する岸壁構造の開発を目指したものである.本稿では,50G 場の遠心載荷模型実験を実施し,矢板背後の補強材に関する敷設長や敷設高および設置段数を変化させ,地震時の変位抑制効果や補強材に作用する引張力,矢板の曲げモーメントについて考察している.その結果,補強材を適切に敷設することによって地震時の安定性が向上するとともに,矢板の曲げモーメントを抑えて低剛性の鋼材を選択できるため,従来の控え矢板式よりも安価で優れた護岸・岸壁構造を構築できる可能性を示した.