2017 年 73 巻 2 号 p. I_516-I_521
近年,各地の河口部において深刻な侵食現象が見られる.このような河口デルタの発達と汀線後退を論ずる際,線形近似された拡散方程式型のワンラインモデルの解析解を使用することがある.ただし,通常使用される解析解は無限長の砂浜に注ぐ河川を対象としている.このため,実際に存在する岬などの砂浜端部の影響を加味することが出来ない.そこで,有限長さの砂浜に発達する河口デルタに関する理論的検討を行った.その結果,無次元時刻t*が0.3よりも短い時間の間では境界の影響が現れず,既往の解が適用できることが分かった.また,無次元時刻がこの限界時間より大きい時には放物線形状の汀線が平行移動する単純なデルタ発達過程を示しており,この時,河口から境界にかけて漂砂量は直線的に減少する.実験値を用いてこの理論の検証を行った.