抄録
ケーソン据付等の大型船を用いた海上工事では,工事の中止基準を下回る海象条件であっても,船の動揺が原因で工事が中止になる場合がある.この原因の1つに「うねり」の存在が考えられるが,有義波高等の代表諸元を用いた解析では,その存在を明らかにすることが困難である.本研究では,方向スペクトルを用いた分析から,低波浪時に海上工事が中止になった期間の波エネルギーの特徴を明らかにするとともに,出現率の経年変化傾向を調べた.この結果,東北管内では,0.05~0.09Hzの周波数帯(11~20sの周期帯)のうねり性の波エネルギーの出現率が増加傾向にあり,その出現特性は太平洋域の海面水温の変動と密接な関係があることが明らかとなった.