2018 年 74 巻 2 号 p. I_504-I_509
本研究では近年,大阪湾湾奥の御前浜において再確認されている準絶滅危惧種のウミニナを対象に御前浜を含む11干潟で生息環境の定量化を行った.ウミニナは大阪湾において2012年以降,生息地点は増加しており,11干潟においてウミニナの生息した地点の個体群密度は56~1307個体/m2であった.また,決定木を用いて御前浜におけるウミニナの個体群密度および11干潟における生息の有無を推定した結果,シルトクレイ率,含水率が寄与していた.さらに,11干潟のウミニナの平均殻長とChl.a量の関係より,ウミニナの成長には藻類量が寄与していることが示唆された.御前浜にみられた近年のウミニナの加入は,他の海域からウミニナが流入したものではなく,大阪湾にある干潟がソースとなってネットワークが機能するとともに,生息環境が整っていた可能性が示唆される.