2018 年 74 巻 2 号 p. I_510-I_515
都市部運河域は,夏季の貧酸素化,淡水化および底質の悪化等により環境変動が大きい.運河域に造成された干潟,海浜そして浅場について,長期的な環境の変遷を明らかにするために,造成後約15年間にわたる調査を実施し,生物生息場としての機能や条件を把握することを目的とした研究をおこなった.その結果,造成直後から底生生物が加入し,毎年30種~40種が出現した.また,運河域では,地盤高が生物分布制限要因となっている可能性が示唆され,干潟造成の際には安定して生物が出現していたA.P.±0.0m~A.P.+0.5m(L.W.L付近)の範囲を拡大することで,生物の生息空間が広く確保され,早期に生物相が形成されると考えられた.また,近年注目されているグリーンインフラの考え方に基づいて,運河域に造成された干潟・海浜環境の生物生息場としての機能を整理した.