抄録
本研究では, 海上表層の風速観測値から風車ハブ高度風速を推定する手法としてWRF-現場観測値併用手法を提案し,鉛直1次元モデルMOST-EKMANとの比較を行うにより,その有用性及び問題点について検討を行った.精度検証には,波崎海洋研究施設(茨城県神栖市)の桟橋上の風速観測値を用いた.海からの風に限定した場合には,WRF-観測値併用手法の精度は,バイアス3.83 %,RMSE15.05 %,相関係数0.95であり,WRFのみを用いた場合やMOST-EKMAN手法よりも高い精度であることがわかった.ただし推定風速には過大評価傾向が見られたため,この要因を調べた結果,WRFで計算される風速鉛直プロファイルの鉛直シアーが陸風時に大きくなり過ぎることが原因であることが明らかになった.更に大気安定度との関係を調べた結果,波崎桟橋上で安定な時にこの傾向が見られやすいことが判明した.