2019 年 75 巻 2 号 p. I_438-I_443
鋼矢板は優れた断面性能を持ち止水性のある土留壁を形成できることから,港湾では護岸などの抗土圧構造として用いられている.しかしながら,鋼矢板の鉛直載荷試験例は少なく,鉛直支持力を期待する本設構造物として用いる際の支持力推定式が「港湾の施設の技術上の基準・同解説(平成30年)」1)において,詳述されていない実情があり,粘性土層の周面抵抗力を鋼矢板支持力として考慮する場合の課題となっている.本設基礎構造として鋼矢板を用いる際の支持力推定式は,「鉄道構造物に適用するシートパイル基礎の設計・施工マニュアル(案)」2)に記載されているが,バイブロハンマ工法による打設を対象としたものである.そこで,護岸改良に適用する新しい構造形式である「櫛形鋼矢板工法」の長尺鋼矢板を想定し,油圧圧入工法等により施工されるハット形鋼矢板(SP-50H)単体の鉛直押込みによる支持力試験を実施し,測定された基準支持力を施工法の違いを考慮して,既往の推定式と比較・考察した.