土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
75 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.35(特集)
  • 中嶋 道雄
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1-I_6
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     我が国でCIMが2012年に提言されてから7年が経過しているが,港湾工事での活用はまだ十分とは言えない状況である.こういった中で,国⼟交通省の港湾⼯事で初となるCIM活⽤⼯事(発注者指定型)を実施した.この中でCIM活用の具体例を示すとともに,活用時に発⾒した利点や課題を述べている.実施項⽬は⼤きく分けて 1.施⼯上の課題の机上での解決,2.関係者への説明,3.施⼯管理への活⽤, 4.出来形検査への応用, 5.CIMを活用した電子監督検査の5項⽬である.またCIMの将来展望についての検討を⾏った.

  • 髙田 佳史, 高木 泰士
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_7-I_12
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     港の開口部に可動式の水門や防波堤を設置し津波・高潮襲来時に港内やその背後地域の被害を防ぐ技術に注目が集まっている.既設構造物と組み合わせて効果を発揮するため,可動部のみでなく,その周囲からの海水流入にも留意する必要がある.特に防波堤の基礎部分は捨石を積み上げた構造が多く,港内外に水位差が生じると捨石の間隙を通じて港内に海水が流入する可能性がある.しかし,基礎捨石を浸透する津波や高潮のリスクはこれまで十分に認識されておらず,流入流量の検討を行うための手法が確立されていない.本研究では防波堤・捨石模型を設置した小型水槽実験とOpenFOAMによるポーラスを配置した数値流体解析を行い,捨石部からの流入量について検討した.両者の比較を行い,非ダルシー則の係数としてErgunの推定式が適用できることを明らかにした.また,閉鎖した実物スケールの港を想定した試計算では,基礎捨石より流入する津波や高潮が港内で有意な水位上昇をもたらすことを示した.

  • 酒井 大樹, 金澤 剛, 辻本 剛三
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_13-I_18
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     捨石護岸の施工中に台風等による高波浪が来襲して捨石堤が被災することが問題である.捨石堤の安定性の評価として天端直上の流速が重要であると考えられる.そこで本研究では,捨石堤天端直上流速を評価するための一歩として,捨石堤を多孔質体として再現した場合のOpenFOAMの適用性について検討した.水理模型実験と数値解析結果を比較したところ,実験の造波板の動きを忠実に再現することで初期波形から良好な再現性が得られた.また,捨石堤の空隙率を適正に与えることの重要性が明らかとなった.捨石の安定性評価に欠かせない流速についても検討に十分な精度であることが得られたほか,捨石堤の内部水位も再現できることがわかった.さらに,捨石堤の被災過程を評価するには規則波ではなく,不規則波による検討が必要であることが明らかとなった.

  • 二村 昌樹, 川崎 浩司, 有光 剛
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_19-I_24
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     本研究では,津波に伴う大規模渦に関する水理模型実験を対象に,海岸・海洋工学分野で使用頻度が高い3次元数値解析モデルであるOpenFOAM,CADMAS-SURF/3D,T-STOCを取り上げ,各モデルの比較検討を実施した.はじめに,OpenFOAMを用いた水理模型実験の再現計算を通じて,計算精度に影響を及ぼす移流項の差分スキームについて検討を行った.その結果,高次精度の差分スキームを使用することが計算精度の向上を図れることから,本研究ではCADMAS-SURF/3DとT-STOCに対して2次精度風上差分スキームを導入して,解析モデルの比較検討を行った.その結果,流動場の時空間変化に差があるものの,各モデルは水理模型実験をおおむね再現できることを確認した.

  • 髙橋 研也, 池野 勝哉, 宇野 州彦, 西畑 剛, 藤井 直樹, 保延 宏行, 竹家 宏治
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_25-I_30
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     2011年東北地方太平洋沖地震津波では,沿岸部に立地する石油コンビナートなどにおいて多くの危険物屋外タンク貯蔵所が甚大な被害を受けた.このうち,1,000kL未満である「小規模タンク」が約90%と報告されており,これらを対象にした津波時の安全方策を講じることは極めて重要である.

     そこで,著者らは小規模タンク本体への津波対策として,耐久性(耐食性),施工性および引張強度に優れた炭素繊維シート(CFRP)による滑動・漂流防止対策工を提案している.タンク基部とRC基礎をCFRPで面的に拘束するもの,およびタンク側板の中部にCFRPを介してアイプレートを施工してワイヤーをグラウンドアンカーなどに展張するものである.本研究では,提案した対策工について津波外力に関する水理模型実験とCFD解析をおこなった.

海洋開発論文集 Vol.35
  • 田中 陽二, 吉岡 健, 仲井 圭二, 永井 紀彦
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_31-I_36
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     本研究では,北九州市沖の観測データを用いて,洋上風力発電の疲労照査に必要となる,風と波の長期結合確率分布モデルの構築を行った.従来モデルでは周期の風速平均値が過小評価となる課題が生じることが分かり,現地海域の波浪特性に応じたモデルの改良を行った.改良モデルとして,発達した風波の経験式と,うねりの伝播モデルを組み合わせたモデルを提案した.モンテカルロシミュレーションの結果から,改良モデルは,波浪の過剰な発達を抑え,現地の波浪特性を良く再現していることが確認された.また,モデルを構築する上で,風波の発達状況を定量化した,波高発達率という新しい指標を提案した.

  • 吉岡 健, 田中 陽二, 仲井 圭二, 永井 紀彦
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_37-I_42
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     洋上風車支持構造物の終局限界状態設計のため,響灘を対象として,発電中の高波浪時海況SSSを評価した.まず,過去の高波上位30擾乱に対する気象・海象シミュレーションを実施して風速と波高の散布図を得た.次に,逆一次信頼性解析法(IFORM)によって,10分平均風速と有義波高の組合せの再現期間が50年となる風速-波高関係(環境等値線)を評価した.その結果,風荷重応答が極大値となる定格風速付近でのSSS波高は50年確率波高よりも低い値となること,カットアウト風速を超える擾乱の直後は発電を再開しないことを考慮すれば更なる設計波高の低減を通じた合理化・経済化が可能となることがわかった.

  • 松浦 良太, 小林 智尚, 吉野 純, 豊田 将也
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_43-I_48
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     再生可能エネルギーのなかで海洋エネルギーの導入は比較的遅れている.これはエネルギー密度が低いことが主な原因である.波力発電装置では発電効率に波向も重要なパラメータとなるため,本研究では機械工学・船舶工学の視点から求められる波浪特性パラメータを用いて波エネルギー賦存量を評価した.まず全国港湾海洋波浪情報網ナウファスを用いて全国の波エネルギーを算出し,高エネルギー地域を抽出した.その結果,年平均波エネルギーが高く季節変動が少ない鹿島周辺が波力発電に適していた.次にこの鹿島周辺を対象として波浪推算を行い,波力ポテンシャルマップを作成した.このポテンシャルマップから,波力発電には銚子周辺海域が有望であった.また最大波エネルギー波向を考慮した場合,この海域では方向制限により29%エネルギーが減少した.

  • 濱添 洸也, 山城 徹, 加古 真一郎, 城本 一義
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_49-I_54
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     鹿児島県の大島海峡,長島海峡,黒之瀬戸で密度成層を考慮した潮流の数値計算を行った.潮流の絶対流速は大島海峡では待網岬沖,長島海峡では鳴瀬鼻沖,黒之瀬戸では梶折鼻沖の地点で最大となり,これらの地点の潮流の流速とエネルギー賦存量は夏季よりも冬季に大きい傾向を示した.夏季の流速減少は潮汐エネルギーが海水の密度成層の弱化に消費されていることが原因であると考えられる.潮流発電装置を1機設置場合に抽出できる年平均エネルギーは大島海峡で1.0MWh,長島海峡で4.1MWh,黒之瀬戸で12.8MWhであることを示唆した.

  • 井手 喜彦, 竹田 聖二, 児玉 充由, 山城 賢, 橋本 典明
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_55-I_60
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     台風の常襲地帯であり高潮災害に対する脆弱性が高い有明海では,温暖化した将来気候において生じる高潮および高波を把握することが強く望まれている.そのためには台風特性の将来変化について妥当性の高い検討が必要である.そこで,本研究では大規模アンサンブル気候予測データ(d4PDF)を用いて有明海における台風特性の将来変化を評価した.評価には,一般的に扱われる台風強度や来襲頻度に加え,高潮に大きな影響を及ぼす台風の進行方向や経路の曲がり具合についても議論し統計的な解析を行った.その結果,将来的に有明海の西の海上を通過する台風の勢力が増すこと,また来襲する台風の進行方向のばらつきが大きくなること,さらに勢力の強い台風において右に転向する経路を取る台風が増加することなど,今後の高潮高波推算に資する有益な知見を得た.

  • 鷲田 正樹, 室井 直人, 高橋 智幸
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_61-I_66
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     相模湾は太平洋に面した開放性の深海湾で,ここでの高潮は吹き寄せ効果が極めて小さく,吸い上げ効果で水位が上昇する.特に,相模湾西部海岸は急峻な地形であり,高波浪が沿岸域の狭域で砕波帯砕波することにより,平均海面の上昇(Wave Setup)を発生させる.平成30年7月に来襲した台風12号(台風1812号)を対象に,相模湾の高波とWave Setupを含む高潮(Wave Setup高潮)の解析を行った.その結果,相模湾西部海岸では,砕波による波高減衰は局所的で,高波浪が沿岸域に直接侵入し,砕波帯内に短周期変動するWave Setup高潮を生じさせ,その最高水位は平均海面上2.7mに至ることが示された.Wave Setup高潮と高波浪の発生地域は海浜流系により規定され,発生域は地形的に固定されており,これらの場所では越波災害のリスクが極めて高い.

  • 中條 壮大, 花元 響, Sooyoul KIM
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_67-I_72
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     石垣島周辺の海域における確率台風モデルの再現精度を確認した.また,対象海域における長期再現期間の台風強度を推定した.強い台風の経路として北西方向に進むものが主であることが示された.理想的な仮想台風トラックに基づく非線形長波方程式の解析から,石垣島南岸において危険な高潮をもたらす台風の特徴を調べた.その結果,北東~北に進む経路が経路への鋭敏性も高く危険であるが,実際に多いのは北西に進む台風であり,強度もそちらが強い傾向にあることから,仮想シナリオから得られる潜在的なリスクと確率台風モデルの結果から得られる実質的なリスクには違いがあることが明らかとなった.多項式近似により最大高潮偏差の経験式を推定し,低頻度大災害の高潮イベントを推定し,そうしたイベントを引き起こす台風経路の特徴を示した.

  • Le Tuan ANH, Hiroshi TAKAGI, Nguyen Danh THAO
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_73-I_78
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     Typhoon Linda in 1997 is considered to be the worst tropical cyclone ever to make landfall in the Mekong Delta, Southern Vietnam. Linda caused catastrophic social impact with over 3,000 fatalities and US$385 million in property loss. The fatalities were mostly fishermen and sailors who were caught at sea in Linda’s path and unable to escape. There is little information about Linda because of the lack of a detailed post-disaster investigation. In this study, we conducted an interview survey with local residents of Con Dao Island, where Linda passed nearby, to reveal how this historical disaster event remains in their memory. A numerical simulation using the coupled typhoon, storm surge, and wind-wave model was also performed to investigate the spatial extent of the storm surge and high waves during Linda’s passage. The results showed that the storm tide was not necessarily extreme, but reached 1.5 m in the delta. In comparison, waves off the Mekong Delta were estimated to be 8 m high, which appears sufficient to capsize many wooden fishing boats.

  • 鈴木 達典, 井山 繁, 坂田 憲治, 村田 恵, 吉田 英治
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_79-I_84
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     港湾分野でのICT浚渫工(港湾)は,国土交通省が推進するi-Construction施策のひとつであるICTを全面的に活用する浚渫工事であり,主にマルチビーム測深を用いて実施されている.マルチビーム測深は海域を面的に捕捉できるため,シングルビーム測深に比べ測深すべき海域の未測域が少なく,土量も従前の平均断面法に比べ正確に算出可能となり品質は向上した.一方で現在運用されているマルチビーム測深ではシングルビーム測深に比べ,測深作業やデータ処理等にかかる時間,費用等に関し,生産性向上が達成されたとは言えない状況である.これらを踏まえ,平成29年に整備されたマルチビーム測深の基準類の改定が平成30年に行われたが,依然として同様の問題が引き続き発生している.本検討は,マルチビーム測深での取得点密度等の基準の適正化による生産性向上に向けた提案を行うものである.

  • 吉田 英治, 井山 繁
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_85-I_90
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     国土交通省は,生産性向上を図るi-Constructionを推進し,港湾分野では,一連の建設生産プロセスに3次元点群データを使用するICTを取り入れたICT浚渫工を導入している.2017年度のICT浚渫工の開始にあたり,モデル工事を実施し,諸課題を検討のうえ基準類を整備している.「3次元データを用いた港湾工事数量算出要領(浚渫工編)」はそのひとつで,3次元点群データを用いた浚渫土量の計算方法を定めている.ICT浚渫工の試行において,複雑な現場条件では数量に相違が生じる可能性があるとの指摘があったが,3次元点群データを用いた浚渫土量の計算方法は, 複雑な現場条件が反映される方法となっていない部分がある.本稿では,ICT浚渫工の基準類の「カイゼン」として,3次元点群データを活用し,複雑な現場条件における浚渫土量の計算を適正に行う方法について検討した.

  • 三上 信雄, 梅津 啓史, 松本 力, 完山 暢, 大西 明夫, 不動 雅之, 井上 真仁
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_91-I_96
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     漁港施設の点検は目視調査を主体に行われているのが現状であり,防波堤や係留施設の水中部では,潜水目視による点検のため結果にバラツキが生じやすく客観性に欠けることが指摘されている.また,潜水目視調査は時間や労力を要することや安全面での課題もあり,改善策が求められている.本稿では,水中部点検における客観性確保と潜水目視調査の軽減策の検討のため,ナローマルチビームソナーを用いた点検手法について,漁港施設の老朽化度基準を基に現地試験を行い適用性を検証した.その結果,比較的規模が大きく機能に支障が生じる可能性のある被覆工の移動・散乱や損傷,本体工の欠損,電気防食の欠落等の評価などに適用性が高く,詳細調査前の簡易診断として実施することにより潜水目視調査のスクリーニングとして有効であることが確認できた.

  • 道前 武尊, 樋渡 和朗, Sivaranjani Jayaprasad , 琴浦 毅, 片山 裕之, 篠沢 佳久, 櫻井 彰人
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_97-I_102
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     港湾施設の中で建設後 50 年を経過するものが増加するなか,水中部の点検を実施する潜水士の数は年々減少傾向にある.今後,定常的に発生する港湾施設の点検に対し,潜水士による点検の代替手法として広域かつ短時間に水中部を計測可能な技術を確立することが必要不可欠である.リアルタイム水中ソナーを用いた港湾施設の点検診断手法やガイドラインに定められた点検項目の中で代替可能な項目について確認してきた.本稿では,リアルタイム水中ソナーの取得データを過去のデータと比較する機構を構築し,ガイドラインに定められた点検項目への適応性や,点検にかかる時間の効率化の可能性を検討する.また,既往の研究において点検項目に対する適応性が低く運用が困難と判断したものに対し,水中部の点群データを用いた畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の港湾維持管理への利用可能性について報告する.

  • 山木 克則, 板川 暢, 秋山 完幸
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_103-I_108
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     遠隔操作による飛行および水面移動により,水中撮影や水深計測ができる水面浮体型ドローン「SWANS」を開発し,サンゴ礁のモニタリングに適用した.SWANSの海面への離着水,水面移動における波の影響について現地検証を行った結果,有義波高H1/321cm以下にて安定した稼働性を確保できた.

     沖縄県慶良間諸島海域にて実施したサンゴのモニタリングは,SWANSを用いて調査ライン200~300mを対象として水深計測と写真撮影でサンゴ群体の記録を実施した結果,従来の潜水作業によるモニタリングに比べ,迅速で簡易,かつ安全なモニタリングの確認ができた.また,約400㎡のサンゴ礁域を連続撮影した画像データで,SfM解析を行い,海底地形の3D化およびオルソ画像を作成したところ,実用上問題のない精度が確保できた.

  • 琴浦 毅, Sivaranjani JAYAPRASAD , 今野 洋幸, 宮作 尚宏, 堺 浩一, 間野 耕司
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_109-I_114
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     水中を透過するグリーンレーザを活用した航空機測深技術Airborne Laser Bathymetry(ALB)は,気中水中データをシームレスに取得できる技術として河川,海岸管理での活用が検討され始めているが,港湾事業における適用性について検証された事例は少ない.そこで,本研究では透明度が3m~15mの条件の異なる3港湾の観測を通じてALBの港湾事業への適用性について検討した.

     その結果,ケーソン壁面部や高濁度下のデータ取得について課題はあるものの,透明度によっては水深20mまでも気中水中データが連続して取得できるなど港湾事業においても活用が期待できる技術であることが確認された.

  • 壱岐 信二, 藤山 達生, 門脇 極, 横田 智映, 渡辺 智晴, 黒沼 徳満, 塚本 吉雄
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_115-I_120
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     北海道留萌海岸に沿って走る国道232号では,悪天候時に発生する強い西風で越波被害が生じている.この対策として,被災箇所で汀線・深浅測量が行われているが,当地は沖合約300mに浅い岩盤帯が分布し,砕波帯内にはバーが発達するなど「測量がしづらい」場所であった.そこで,航空機搭載のグリーンレーザ(以後,ALB)で,海から陸を効果的に測量する技術を試行した.取得した最大水深は約10mで,最浅部の高さが10cmの岩礁や水深約3mに発達したバー等の地形が測量できた.従来技術との比較では,ALBの精度は15cm以内,路線長1.5kmにおける現地と解析の作業性は2.3倍,経済性は路線長が2.1kmを越えると優れること,さらにレーザ計測と同時に空中写真撮影を行うためデータの付加価値が高まる等がわかった.

  • 川口 真吾, 鶴田 修己, 髙阪 雄一, 岡崎 裕, 朝比 翔太, 酒井 和也, 鈴木 高二朗
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_121-I_126
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     港湾構造物の維持管理,特に被災直後の消波ブロックの沈下計測では,消波ブロックに人が直接昇って測量するなど過去には危険な状態で実施されることもあった.この代替手段として,UAVを用いた計測により正確な三次元データが取得できれば,従来よりも安全かつ安価で高精度な測量を実施できる.本研究では,これまで実施されてきたGCPと組み合わせたUAVによる写真測量に加えて,島防波堤のような船舶を用いなければGCPを取得できない海上の施設でも直接の計測ができるRTK-GNSSシステム及びPPKシステム搭載型の各UAVを用いて防波堤等の測量を実施し,それらの計測精度を比較した.その結果,RTK-GNSSシステムおよびPPKシステム搭載型のUAVを用いれば,数cmの誤差で防波堤の形状を測量できることが明らかとなった.

  • 菊 雅美, 森 勇人, 中村 友昭, 水谷 法美
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_127-I_132
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     UAV-SfM/MVS測量によって地形変化量を算定するには高精度な3Dモデルの構築が必要となるものの,解析時の設定によって構築されるモデルには差異が生じる.しかし,設定値の選択に一定の見解は得られておらず,作業者の判断に委ねられている.本研究では,礫浜を対象としたUAV-SfM/MVS測量における最適な解析方法を検討するとともに,2年間にわたる観測結果から現地海岸の短期的・長期的な地形変化について波浪情報と併せながら考究した.その結果,写真の撮影位置の推定処理が構築される3Dモデルの精度に影響を及ぼすことを明らかにした.また,現地海岸では,高波高・長周期の波により侵食し,低波高・長周期の波により堆積する短期的な地形変化特性があることを示した.

  • 大矢 陽介, 伊藤 広高, 小濱 英司
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_133-I_138
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     港湾の係留施設を対象とする地震災害時の初期調査方法として無人航空機の活用を検討した.無人航空機による撮影画像を画像解析することで対象施設の移動量の評価は可能であるが,精度を確保するために基準点の設定が重要である.大規模地震では,岸壁の変位の影響が背後地の広範囲まで影響する可能性があり,地震前に座標取得済みの基準点も地震後には移動している可能性がある.そのため,地震後に新たに基準点の設定し座標を計測する必要があるが,津波警報等で施設に立ち入ることができない場合,困難である.本研究では,災害時に基準点の利用が制限されることを想定し,画像処理の際の基準点の配置が係留施設における残留変位の計測精度に与える影響を評価した.

  • 青木 健太, 鶴江 智彦, 安田 誠宏, 松下 紘資
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_139-I_144
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     海岸護岸の天端高の設定においては,越波流量を許容値以下に抑えることが最も重要であるが,環境面や景観面から天端高はできる限り抑えたい要求もある.護岸の前面海域への拡張に制限がある場合は,消波ブロックを積み上げて形成される直立消波ブロック護岸が適用される.しかし,消波ブロックの形状は様々であり,それらの違いによる越波特性の比較検討はあまり行われていない.本研究では,2種類の直立消波ブロック護岸と直立護岸の越波低減効果について検討する.実験の結果,菱形開口部を有する斜積消波ブロック護岸は,蓋型の天端工にした場合,あらゆる条件で直立護岸よりも越波を低減できることがわかった.また,反射率と打上げ高についても検討した結果,直立護岸に比べて反射率は低くなり,最大打上げ高を小さく抑えられることがわかった.

  • 中谷 和博, 山城 賢, 児玉 充由, 武田 将英, 倉原 義之介, 原 知聡, 西山 大和
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_145-I_150
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     地球温暖化による海面上昇や台風の強大化の影響で,これまで越波が生じていなかった護岸においても将来的に越波が発生するようになることが考えられる.越波被害の対策としては,護岸の嵩上げや消波工の設置などが考えられるが,設置する空間やコストの制約から,これらの対策工を新設するのは困難な場合もあり得る.このような観点から,著書らは既存の護岸に円柱状の構造物を係留する低コストかつ簡易な越波対策工を提案し,まず水理模型実験により,簡易越波対策工の重量によってその効果の傾向に違いはあるものの,高い越波低減効果を期待できることを確認した.ついで,SPH法に基づく数値シミュレーションを行い,対策工を固定した条件での数値シミュレーションであっても,簡易越波対策工の越波低減効果を評価できることを確認した.

  • 中村 文則, 井野 裕輝, 神田 佳一, 下村 匠
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_151-I_156
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
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     実海域に設置された消波ブロックの設置状況の違いが,飛来塩分に与える影響を評価することができれば,飛来塩分量の予測精度の向上に繋がる.本研究では,消波ブロックが設置されている海岸において,飛来塩分量の現地観測を実施し,その影響について検討を行った.さらに,空中写真を用いて消波ブロックの設置状況を分類し,設置状況の違いが飛来塩分量に及ぼす影響について評価を行った.その結果から,汀線近傍における飛来塩分量は,消波ブロックの設置の有無とその設置状況の影響を受けて局所的に変化していることが示された.さらに,空中写真を用いて消波ブロックの設置状況を分類することで,消波ブロックが飛来塩分量に及ぼす影響を定量的に評価できることが明らかになった.

  • 榊原 洋子, 我部山 喜弘, 岡崎 慎一郎, 金崎 浩司, 濱田 一志, 和田 健司, 石丸 伊知郎, 西藤 翼
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_157-I_162
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     本研究では,結像型二次元フーリエ分光法技術を用いて,小型で除震不要な近赤外分光システムを試作し,コンクリート表面の全塩化物イオン濃度の二次元イメージングの現場での適用性を念頭に,従来のシステムの改良と,現場での測定に関して検討を行うものである.種々の検討の結果,屋外で太陽光の影響を受ける環境下では,アシスト光源とローカットフィルタを用いることを確認した.また,光源および測定対象が測定可能となる位置関係を把握した.吸光度とコンクリートの塩化物イオン濃度に関する検量線を作成し,塩化物イオンの二次元イメージングが,現場にて,短時間で概ね問題なく塩化物イオン濃度の二次元イメージングが可能であることを確認した.

  • 熊谷 隆宏, 秋本 哲平
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_163-I_168
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     液状化対策工として薬液注入工法を実施する際,あるいは地震時における地盤の液状化の可能性を判定する際に,細粒分含有率やN値といった性状を綿密かつ正確に把握できていることが望ましい.埋立地盤のような複雑な土層構成においても,細粒分含有率やN値を精度良く推定するため,2011~2017年における東京国際空港の地盤改良工事で取得したボーリング削孔時の計測データを活用するとともに,非線形の回帰が可能なランダムフォレスト法,サポートベクターマシン,ニューラルネットワークの3タイプの機械学習モデルを構築し,それぞれの適用性を検討した.特に,ニューラルネットワークで細粒分含有率やN値を同時に学習するマルチタスクモデルにより,精度良く推定できることが分かった.

  • 黒坂 明善, 海野 寿康, 上野 一彦
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_169-I_174
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     海上地盤改良工における CIM や施工不良問題などの観点から,従来の施工管理情報に加えてより詳細な施工管理情報を入手出来る方法が求められている.そこで本研究では,「浅層反射法地震探査」に基づく地盤改良土の新しい品質確認手法の開発における取組みとして,地盤改良土のせん断波速度Vsとせん断強度τfの関係を調べるために,地盤改良土を模した供試体を作製し,ベンダーエレメント試験および室内要素試験を行った.さらに,N値の設計式により推定されるせん断強度とせん断強度の実験値を比較することで,N値の設計式の適用性について検討を行った.その結果,地盤改良土のせん断波速度とせん断強度には正の相関があることが明らかとなった.N値の設計式に基づくせん断強度の推定値は,用いる式によってばらつきが大きいことを示した.

  • 森崎 亮太, 小林 薫, 本多 顕治郎, 宮﨑 航
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_175-I_180
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     水産系副産物であるホタテ貝殻は,その処分法や活用法が現状では確立されておらず,北海道などを中心に多くの漁港周辺に野積み状態にされている.一方で,貝殻を建設資材へ有効利用する試みも図られているが,未だケーソン中詰材,漁港の岸壁の裏込め材等への利用に止まっている.

     本研究では,貝殻を有効かつ大量に活用できるようにすることを目的に,破砕貝殻の特異なせん断強度特性を貝殻の破砕粒径ごとに室内試験により把握した上で,軟弱地盤対策として破砕貝殻のせん断強度特性を考慮した地盤改良材に適用した場合の対策効果を,粘土地盤と破砕貝殻との複合地盤の円弧すべり計算および一次元有効応力解析により検討した.その結果,破砕貝殻は粘土や砂で構成されている軟弱地盤の地盤改良材として効果的に利活用できる可能性を有する材料であることを解析的に明らかにした.

  • 松浦 慶弥, 小林 薫, 森井 俊広
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_181-I_186
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     半乾燥地における塩類集積防止の対策工の1つとして礫層と砂層を重ねたキャピラリーバリア地盤(以下,CB地盤と記す)がある.半乾燥地の乾燥砂は施工時の振動等で礫粒子の間隙に混入しやすく,層境界面を長期的に保持することが困難である.筆者らは,この課題に対し礫材の代替材として破砕貝殻を用いることで,CB機能を保持したまま乾燥砂が破砕貝殻層の間隙内へ混入することを同時に防止することを明らかにした.しかし,破砕貝殻を用いた場合,貝殻粒径により水分特性曲線が異なるため,微粒子分を含む破砕貝殻層で構築したCB地盤は水分(塩分)の上昇遮断機能を低下させる可能性がある.本研究は,微粒子分を含む破砕貝殻層を用いたCB地盤の長期に渡る毛管上昇の遮断効果を室内実験によって観察すると共に,供試体内の水分挙動の数値解析を行った.

  • 谷 和夫, 池谷 毅, 林 史泰, 稲津 大祐
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_187-I_192
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     海洋土木構造物の建設あるいは海底の浅部に賦存するエネルギー・鉱物資源の開発では,表層地盤の力学特性あるいは貯留層・鉱床の性状を調べる必要がある.そこで,海域の表層地盤(海底下20メートル程度)を経済的かつ効果的に調べる新しいサウンディング方法として,バイブロ・サンプリング兼コーン貫入試験(VS-CPT)を考案した.プローブの形状を検討するために模型を作製して土槽に貫入する実験を行い,開口率が0.5以上であれば貫入性能と採取性能が高いことを確認した.そして,貫入深さが2メートルで開口率が0.67の試験装置(原型装置:Mark 1)を設計・製作した.

  • 赤星 怜, 趙 容桓, 渡辺 樹也, 中村 友昭, 水谷 法美
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_193-I_198
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     干潟保全の重要な因子とされる細粒分の動的特性解明の一環として,砂粘土混合土から成る地形の変動に着目した水理模型実験を実施し,波浪条件と粘土含有率による混合土砂地形の変動特性と,粘土の空間分布が混合土砂の漂砂特性に与える影響を検討した.その結果,粘土を含む混合土砂では,地形形成過程において粘土の粘着力の影響により,地形変動を遅延させる効果があった.また,比較的高い粘土含有率条件下では,地形変化を大きく抑制することができ,その際の地形変動特性は砂には見られない地形形成過程が示された.さらに,混合土砂の侵食は,粘土の流出後に砂が移動することで生じ,砂は侵食された混合土砂上で砂連の形勢と消失を繰り返し,被覆された混合土砂地盤の侵食を抑制する効果を有することが示唆された.

  • 栗原 大, 土田 孝
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_199-I_204
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     福島第一原子力発電所事故後の除染作業により発生した放射性セシウムを含む除去土壌を海面処分場で最終処分することを想定し,海面処分場の底面遮水に用いる遮水地盤材料の配合設計に関して,透水性,セシウム吸着特性,圧縮性および圧密特性を考慮する方法について検討を行った.透水性,圧縮・圧密特性については段階載荷圧密試験,セシウム吸着特性については圧密通水試験による検討を行った.遮水地盤材料は,海成粘土にベントナイト,砂,ゼオライトを添加した材料を検討し,個々に添加したときの各特性を調べることで,複数の材料を添加した場合の各特性を予測できることを示した.

  • 望月 美登志
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_205-I_210
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     海洋周辺施設への利活用展開を目的として,製紙製造時に産廃として排出されるPS灰の強度改善効果を確認した.PS灰改質材は,砂質系粒状材料だが粒子内に微細孔を有する高吸水性能により,最適含水比woptも高く,粒子表面の複雑な凹凸形状により平坦な締固め特性と粘着力c値を有する高いφ材としての特徴がある.海洋盛土や造成,海洋施設内部の埋め戻し材には,不適な高塑性浚渫泥土でもPS灰による改質を行うことで改質土の塑性状態が低塑性へと変化し,瞬時にc’ならびにφ’の改善効果が認められた.締固めについても幅広い含水比範囲で所定の締固め度Dcを確保できることが判明した.

  • 兵動 太一, 塚本 良道, 野田 翔兵, 橋本 和佳, 荒井 靖仁, 掛川 智仁
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_211-I_216
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     近年発生した北海道胆振東部地震や熊本地震,東北地方太平洋沖地震などの大型地震では,十分な液状化対策を行なえていなかった古い年代の埋立地における港湾施設,道路や戸建住宅などに甚大なダメージを与えた.また,本来液状化が起こりにくいと考えられていた細粒分を含んだ砂地盤においても液状化が確認された.本研究では都市部の厳しい施工条件下においても周辺地盤に影響を与えず適用できる浸透固化処理工法に着目した.一般的には薬液を使用するが,シリカ溶脱による強度低下が懸念されることから,本研究ではセメント系注入剤を用いた.本稿はセメント系注入材の中でも細粒分を含有する地盤に適応するため通常より微細なセメント注入材を用い,繰返し三軸試験装置を用いて動的変形試験やベンダーエレメント試験を行い,動的変形特性を調べた.

  • 中村 出, 村川 史朗, 片桐 雅明, 田村 彰教
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_217-I_222
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     真空圧密工法は,盛立による圧密荷重よりも少ない土砂量で所定の載荷圧力を加えることができる.そのため,細粒土が広く分布し,盛立用の地盤材料が不足する地域では有用な地盤改良工法となる.今回,ベトナム北部の臨海域のエリアに石炭火力発電所を建設するプロジェクトにおいて真空圧密工法を適用する機会を得た.本地盤改良エリアは,石炭ストックヤードとなるエリアで,重要な設計仕様は,残留沈下量を所定値以内に収めることであった.本文では,同じ土層でも物性値がばらつくベトナム国の地盤調査結果を用いて設定した地盤モデルを紹介し,動態観測結果をベースに修正した予測解析,真空圧除荷時期の判断のために複数の検討を行い,今後の同様な事例に役立つ知見を取りまとめた.

  • 根木 貴史, 樋口 晃, 川野 泰広, 森 晴夫, 古澤 達也, 南野 佑貴, 大石 幹太, 片桐 雅明
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_223-I_228
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     浚渫土砂処分場の受入可能容量を予測するには,粘土の自重圧密を考慮して圧密対象層が増加していく圧密解析を行うことが必要で,粘土が沈降堆積した極低拘束下の圧密定数を含む広範囲の応力状態に対応する圧密定数を設定する必要がある.この極低拘束下の圧密定数を求める方法は特殊な装置を用いる様々な手法が提案されているが,一般化されておらず,簡便に設定できる手法が望まれている.

     本研究では,多層沈降実験を用いる方法で求めた国内5地域の浚渫粘土の圧密特性とその物理特性を収集し,それらの間に高い相関関係があることを示した.さらに,その関係から簡便に圧密定数を設定する方法を提案し,北九州空港島における事例に適用し,提案した方法の有効性を確認した.

  • 中村 友昭, 趙 容桓, 水谷 法美
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_229-I_234
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     気液界面の追跡手法の一つであるVOF法で地盤の不飽和状態を取り扱えるように簡易的な手法を提案し,それをVOF法に基づくモデルFS3Mに組み込んだ.また,不飽和浸透流をより正確に計算できるように地盤内部での抵抗力のモデル化を改良した.そして,平衡状態にある不飽和堤防を対象とした浸透流解析を行い,不飽和状態を初期状態のまま保持できることが確認できたことから,本論で提案した手法の妥当性を示した.また,堤防内部の不飽和浸透現象に適用し,浸潤面の挙動の観点から同現象を概ね再現できることを確認した.さらに,不飽和堤防の越流侵食現象に適用し,特に天端から裏法上部にかけて堤防の侵食形状を比較的良く再現できることを確認した.以上より,堤防内部の不飽和浸透現象と不飽和堤防の越流侵食現象を評価する際におけるFS3Mの有用性を示した.

  • Binh NGUYEN , 佐々 真志, 山崎 浩之, 上野 一彦
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_235-I_240
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     筆者らは,人工排水材(プラスチックドレーン)による液状化時のボイリング被害抑止工法の開発に取り組んでいる.本研究では,既報の1G場模型実験に引き続き,本工法の設計法確立を目的として浸透流解析および遠心模型実験を実施した.その結果,地盤表層から3.0mの浅層部に打設間隔1.2mでドレーンを敷設することで,液状化の発生は許容するものの,地盤表層に液状化は伝播せず,ボイリングによる噴砂も抑制できることが確認された.液状化の発生自体を抑止する従来のドレーン工法と比較すると仕様が大幅に減るため,工期やコストの削減にも大きく寄与することが期待される.

  • 工代 健太, 佐々 真志, 後藤 翔矢, 花沢 大輔, 大塚 悟
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_241-I_246
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     液状化予測判定は一般に地盤のN値から推定した液状化強度をもとに行なわれている.地盤が細粒分を含む場合には,細粒分がN値と液状化強度に与える影響を考慮するため含有率や塑性に応じてN値が補正される.しかし,混合砂質土の母材の均等係数や細粒分の塑性がN値補正による液状化強度の推定精度に与える影響については十分に検証されていない.そこで本研究では液状化予測判定手法の高度化に資するため,母材の均等係数と細粒分の塑性が細粒分混じり地盤のN値と液状化強度の相関に及ぼす影響を実験的に検討した.その結果,現在の基準に基づきN値補正を行なった場合,均等係数が小さい母材砂では液状化強度を過大評価し,液状化の可能性を危険側に評価する可能性があるなど今後の液状化予測判定手法の高度化に資する重要な知見が得られた.

  • バジル ノエルディン, 平石 哲也
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_247-I_252
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     インドネシア国スマトラ島中東部に位置するベングカリス島はマラッカ海峡に面しており,東西約10km,南北約5㎞の肝臓の形に似た島である.1955年より海岸の浸食が生じており,波のあたりが強い北岸で顕著に進んでいる.そこで,近年,侵食対策としてベングカリス政府によりマングローブ林の植樹による波浪等の外力制御が行われており,その効果が生じ始めている.本研究では,生育が期待できる2種類のマングローブ種を対象として,波浪の低減効果を定量的に把握するための数値解析法を整備し,マングローブ林の波浪エネルギー低減効果を求めた.その結果,対象海岸においては赤マングローブ(Rhizophora Mangle)がより高い低減効果を有し,植樹に適していることが明らかとなった.

  • 梶川 勇樹, 和田 菜摘, 黒岩 正光, 片山 崇
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_253-I_258
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     本研究では,河口砂州の発達状況が,海域から河口内への波浪の侵入特性に与える影響を明らかにすることを目的とし,鳥取県中部を流れる一級河川天神川の実地形を対象に,砂州開口位置,開口部周辺水深および開口幅を系統的に変化させた数値解析により検討を行った.解析モデルには,修正ブシネスク方程式によるNOWT-PARIを採用した.解析の結果,規則波・不規則波および砂州開口位置に関係なく,砂州開口幅がある程度広くても,水理条件によっては開口部から侵入してきた波は対岸方向へと偏向し,河口深部への波浪の侵入が軽減されている可能性があることを明らかにした.また,河口内では,砂州開口部からの流れの流入に伴う大規模な渦流が形成されており,この渦流の影響により砂州開口部から侵入してきた波が対岸方向へと偏向している可能性があることを指摘した.

  • 犬飼 直之, 高橋 直紀, 斎藤 秀俊, 安倍 淳, 木村 隆彦, 新西 道浩, 油布 健太郎
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_259-I_264
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     福岡県古賀海岸は両端と突堤で囲まれ沖に人工リーフが設置されたポケットビーチである.ここで平成29年8月に突然襲来した高波浪で流され4名が溺死する事故が発生した.この海岸は離岸流発生の海岸として知られるが,高波浪が突然襲来した目撃情報より離岸流の可能性は低いと考えられる.ここでは波浪の挙動について解析を行いどのような条件下で事故が発生したのかを把握した.まず現地調査を行い水深情報や調査時の現場海岸の海象を把握した.次に波浪推算モデルで卓越波向時等の周辺海域の波高分布や,波動解析モデルで古賀海岸への高波浪到達時の挙動を把握した.その結果,周辺海域の卓越波向時には古賀海岸は半島の陰影部に位置し波高は減衰する事を確認した.また事故時の海岸では突堤の影響で速い流速の沖向きの流れが発生したことを確認した.

  • 平山 隆幸, 中村 孝幸, 浅田 潤一郎, 河村 裕之
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_265-I_270
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     本研究は,島堤の蛇行災害の防止を目的として,従来の研究で十分に明らかにされていない,島堤への作用波力の及ぼす陸域からの反射波の影響を主に検討した.この際,作用波力としては,堤体の前面側のみならず背面側にも作用する波圧を対象とし,それらの合成値として評価した.ここでは,堤体構造および近接する陸域間との距離などに着目して,合成波力および波力と密接に関係する堤体前背面の水位差の特性を理論的に究明した.理論解析には,堤体や周辺境界の低反射条件を考慮して波の回折現象が取り扱える鉛直線グリーン関数法に基づく数値解析法を用いた.

  • 平山 克也, 濱野 有貴
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_271-I_276
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     近年,段差や急勾配を有する没水型構造物や裾礁・環礁周辺の波浪変形を取り扱う機会が増加している.これらの実務計算を安定に実施するために,本研究では,緩勾配近似された基礎式を解くために実地形を局所的に平滑化する代わりに,水深急変部で計算領域を強制的に分断し,この境界間でやりとりする流量Fluxを別途算定して与える「段差境界処理法」を新たに開発・導入して矩形潜堤による波浪変形の再現を試み,既往研究で得た模型実験結果との比較を通じその効果を検討した.

     その結果,段差境界では波の透過と反射が適切に算定され,矩形潜堤による波の分裂・砕波変形のうち少なくとも岸沖方向の波高分布をよく再現できることを確認した.なお,矩形潜堤上の波浪変形を基礎式のみで直接解くためには,波高に応じて海底地形の大幅な平滑化を要した.

  • 村上 剛, 佐伯 信哉, 中村 孝幸
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_277-I_282
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     既に著者らは,複数の透過性防波堤が港湾域に含まれる場合を対象にして,防波堤の特性を反射・透過率などの1次元的な指標を用いて簡易的に取り扱う近似解析法の開発を進めてきた.本研究は,この近似解析法について,平面的に配置された浮防波堤列や浮防波堤を含む港湾域への適用性を従来の実験結果との比較の上で明らかにする.ここでは,特に浮防波堤を抜ける透過波の堤体間および陸域間での相互干渉の近似度合い(干渉近似次数)と算定精度の関係などに着目して検討を行い,工学的な見地から必要となる最低限の干渉次数などについて究明した.

  • Mangala AMUNUGAMA, Katsuyuki SUZUYAMA, Chathura MANAWASEKARA, Yoji TAN ...
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_283-I_288
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     Currently, the estimation of wind-waves on coastal waters is commonly done in practice on structured mesh. However, when complex geometries arise (for instance, irregular coastlines, islands and breakwaters) multistage nesting with smaller grid spacing which entails high computational cost is required on structured mesh and even then it is sometimes difficult to get accurate bottom topographical approximation of only required areas. In contrast, since unstructured mesh can perform detailed geometrical approximation only at necessary places, it is expected to reduce the computational cost while securing the accuracy of the bottom topographical approximation.

     Hence, the objective of this study is to analyse wind waves with SWAN (Simulating WAves Nearshore) model, which is commonly used in practice for nearshore wave analysis, on structured mesh and unstructured mesh and, thereby to find out an effective approach to use SWAN model in future practice. The behaviour of SWAN model on structured mesh (ST-SWAN) and on unstructured mesh (UNST-SWAN) was analysed and advantages of UNST-SWAN over ST-SWAN were discussed. Wind-waves were estimated during the arrival of Typhoon with ST-SWAN and UNST-SWAN. Wind-wave characteristics obtained from both ST-SWAN and UNST-SWAN were basically consistent. Considering the advantages of UNST-SWAN, an effective approach to apply SWAN model in future practice by combining both structured and unstructured mesh where necessary was proposed during this study.

  • Chathura MANAWASEKARA, Yiqing XIA, Mangala AMUNUGAMA, Yoji TANAKA, Kat ...
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_289-I_294
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     Typhoon generated wave behavior in Osaka Bay under recent three major typhoons (T1820, T1821, and T1824) is simulated and discussed in the study. Simulation was conducted using third generation wave model WAVEWATCH III, and results showed that the impact areas for each typhoon can be explained by looking in to the sea wave properties enter into the bay area. Wave energy is represented with significant wave height related to each categorized components of wave frequency, and their contribution to the damages and critical conditions caused by each typhoon are discussed. Analysis shows that the longer period swell enters into the bay area for T1821 than that of for T1820. In contrary, effect of wind waves for T1820 is larger in North and West side of the bay while T1821 affect more in the Eastward side. In addition, wind data from two sources [Local Forecast Model (LFM) and Meso Scale Model (MSM)] by Japanese Meteorological Agency (JMA) were used in the study and the simulation effectiveness in related to wind source is also discussed in the study. However, results with newer and finer LFM wind data showed better agreement with observations in comparison to weaker MSM wind data.

  • 山口 正隆, 宇都宮 好博, 井内 国光, 野中 浩一, 日野 幹雄, 畑田 佳男
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_295-I_300
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     本研究では,相関直線の勾配値aと切片b,bias ν,相関係数ρ,2乗平均平方根誤差σの5統計量から,元となる2種類の時系列資料を用いずに,別の5統計量である各平均値xy,各分散Sx2Sy2,共分散Cあるいは原点を通る相関直線の勾配値a0および逆にa0等からab等を計算するための簡単な式を導出し,韓国の全沿岸沖合9ブイ地点における2014年1年間の観測風(速)資料と気象庁MSM風(速)資料を用いてその妥当性を数値的に検証した.ついで,Heo et al.1)の風資料(上記と同じブイ地点で同じ期間のERA-Interim風資料とNCEP-FNL風資料をWRFでdown scaling)に関するabνρσの入力条件から求めた2種類のxySxSyCのうち観測風資料のみに係わり本来一致すべきxSxはそれぞれ符合しないという疑問点を提示した.

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