2019 年 75 巻 2 号 p. I_61-I_66
相模湾は太平洋に面した開放性の深海湾で,ここでの高潮は吹き寄せ効果が極めて小さく,吸い上げ効果で水位が上昇する.特に,相模湾西部海岸は急峻な地形であり,高波浪が沿岸域の狭域で砕波帯砕波することにより,平均海面の上昇(Wave Setup)を発生させる.平成30年7月に来襲した台風12号(台風1812号)を対象に,相模湾の高波とWave Setupを含む高潮(Wave Setup高潮)の解析を行った.その結果,相模湾西部海岸では,砕波による波高減衰は局所的で,高波浪が沿岸域に直接侵入し,砕波帯内に短周期変動するWave Setup高潮を生じさせ,その最高水位は平均海面上2.7mに至ることが示された.Wave Setup高潮と高波浪の発生地域は海浜流系により規定され,発生域は地形的に固定されており,これらの場所では越波災害のリスクが極めて高い.