2019 年 75 巻 2 号 p. I_7-I_12
港の開口部に可動式の水門や防波堤を設置し津波・高潮襲来時に港内やその背後地域の被害を防ぐ技術に注目が集まっている.既設構造物と組み合わせて効果を発揮するため,可動部のみでなく,その周囲からの海水流入にも留意する必要がある.特に防波堤の基礎部分は捨石を積み上げた構造が多く,港内外に水位差が生じると捨石の間隙を通じて港内に海水が流入する可能性がある.しかし,基礎捨石を浸透する津波や高潮のリスクはこれまで十分に認識されておらず,流入流量の検討を行うための手法が確立されていない.本研究では防波堤・捨石模型を設置した小型水槽実験とOpenFOAMによるポーラスを配置した数値流体解析を行い,捨石部からの流入量について検討した.両者の比較を行い,非ダルシー則の係数としてErgunの推定式が適用できることを明らかにした.また,閉鎖した実物スケールの港を想定した試計算では,基礎捨石より流入する津波や高潮が港内で有意な水位上昇をもたらすことを示した.