2019 年 75 巻 2 号 p. I_779-I_784
東北地方太平洋沖地震時に岩手県の田老町漁業協同組合と吉浜漁業協同組合において,漁船を沖出しし転覆等の被害が無かった漁業者を対象としたヒアリング調査を実施して実避難海域を明らかにした上で,東北地方太平洋沖地震を対象とした津波シミュレーションを行い,実海域における津波流速分布等と漁船速度の関係を分析した.
その結果,最大津波流速が船速の1/2.5程度以下となるエリアを避難海域として設定できることが示唆された.また,漁船によって形状や大きさが異なること,津波によって周期・波高等が異なること,対象漁船数が少ないことなどから更に調査対象を広げ,かつ詳細な検討を行っていく必要があるが,最大津波流速が概ね2.0~3.0m/sのエリアを漁船の避難海域として設定することも推察された.