2019 年 75 巻 2 号 p. I_91-I_96
漁港施設の点検は目視調査を主体に行われているのが現状であり,防波堤や係留施設の水中部では,潜水目視による点検のため結果にバラツキが生じやすく客観性に欠けることが指摘されている.また,潜水目視調査は時間や労力を要することや安全面での課題もあり,改善策が求められている.本稿では,水中部点検における客観性確保と潜水目視調査の軽減策の検討のため,ナローマルチビームソナーを用いた点検手法について,漁港施設の老朽化度基準を基に現地試験を行い適用性を検証した.その結果,比較的規模が大きく機能に支障が生じる可能性のある被覆工の移動・散乱や損傷,本体工の欠損,電気防食の欠落等の評価などに適用性が高く,詳細調査前の簡易診断として実施することにより潜水目視調査のスクリーニングとして有効であることが確認できた.