2020 年 76 巻 2 号 p. I_73-I_78
沖防波堤をなすケーソン群の一部が没水した港湾に残存する静穏度を適切に評価し,岸壁を早期に暫定供用するためには,ケーソンが完全に消失したとみなす代わりに潜堤として機能することを考慮して波浪変形計算を行うことが必要と考えられる.そこで本研究では,水深が急変する矩形潜堤での波の分裂・屈折・砕波をも計算可能な平面2次元ブシネスクモデルを用いた港内静穏度解析を実施し,被災形態の違いが対象岸壁の荷役稼働率に与える影響を考察した.
港口付近の未消波区間のケーソン天端が水面下2mまで沈下した場合,波高1mの入射波に対する伝達波の周期は背後の比較的広い範囲で約80%に短周期化するとともに,砕波減衰などのために,ケーソンが完全に消失した場合に比べ対象船舶・岸壁での荷役稼働率は10%以上高くなることが確認された.