2020 年 76 巻 2 号 p. I_67-I_72
洋上風力発電の地点選定の意思決定において重要となる施設導入および維持管理コストの予測には海象条件の把握が必要となる.著者らは1958年から2010年までの全球・領域気象再現解析から推定された海上風データを用いて,同期間の長期波浪再現計算を実施してきた.ただし気象再現解析による台風強度の再現精度の問題から,台風時の高波が過小評価されることが課題であった.そこで,台風時には経験的台風モデルと全球再解析値とを組み合わせて海上風を設定することにより,台風時の波浪の再現精度を向上させた.また,観測データとの比較を通して,常時波浪や,台風時および非台風時における極大波高の推定精度を確認した.この長期の波浪推算結果を用いることにより,洋上風力発電事業の地点選定の判断に資する波浪情報を提供できるデータベースを構築した.