2020 年 76 巻 2 号 p. I_869-I_874
北海道に位置するコムケ湖を対象に,アマモの炭素吸収機構を解明するために,アマモ場での成層を考慮した溶存無機炭素(DIC)の鉛直分布の推定を概念モデルにより行った.現地観測から,アマモが存在することで成層構造が変化していることが示され,その影響を受けてDICの鉛直分布が決定されていることが分かった.概念モデルの検証は,Submerged Aquatic Vegetation model(SAV model)から得られる鉛直拡散係数との比較により実施した.その結果,成層が強くアマモが十分に存在している領域において概念モデルは高精度な再現性を有することが分かった.また,SAV modelについて,アマモと流動場の高精度な再現計算が可能であるという利点を有するが,計算負荷が大きく,長期計算が困難であるという欠点を持っていた.そこで本研究において,静水圧近似を導入することで,十分な再現性を確保した上で計算時間を短縮することに成功した.