2021 年 77 巻 2 号 p. I_259-I_264
漁港の斜路の反射率は直立壁に比べて小さく,斜路が港内の静穏性を確保する機能をもつことが築港技術者の間で古くより知られている.しかし,漁港の斜路を想定した波浪制御特性の検討例は乏しく,港内静穏度解析の実務において斜路の反射率は天然海浜の反射率0.05~0.2を参考に設定される.他方,長周期波に対して天然海浜は完全反射に近づくことが指摘されている.本研究は数値波動水槽を用いて様々な波高・周期の規則波の漁港斜路での砕波・反射過程を調査した.その結果,斜路勾配が急になるほど,波形勾配が減少するほど,反射率が増大し,既往知見と整合する傾向を確認するとともに,漁港斜路の反射率に一律一定の値を用いることが必ずしも適切ではないことを示した.さらに,計算結果に基づき,規則波作用下における斜路での反射率の算定式を提示した.