2021 年 77 巻 2 号 p. I_277-I_282
地球温暖化に伴う海面上昇や台風の強大化により,将来的に計画規模を上回る高潮の発生が危惧されている.高潮に対するハード面の減災対策を検討するため,本研究では防潮壁のかさ上げが高潮の浸水特性に与える影響を評価した.防潮壁をかさ上げした場合,堤内地への越流量が減少して海域に滞留する海水が増加することで海域の水位が上昇する.その際,海域の水位上昇量は吹き寄せ効果の影響を受けるため,湾口部よりも湾奥部で大きくなる.これにより,湾奥部に面した地域では越流量が増加し,堤内地の浸水深が上昇する地域が発生する可能性があることが示唆された.また,浸水量を市町村別に整理した結果,防潮壁のかさ上げがもたらす減災効果は市町村間で差があることが明らかとなった.