2021 年 77 巻 2 号 p. I_373-I_378
近年,短時間大雨と共に堤防決壊も増加しており,堤防決壊要因の約9割を越水が占める.今後も,水災害の頻発化・激甚化が予想され,堤防決壊までの時間を延ばす「粘り強い堤防」の必要性が高まっている.堤防の危機管理型ハード対策は,天端をアスファルト舗装等で,裏法尻をコンクリートブロック(以下,保護ブロック)等で保護する対策である.この対策には,越水に伴う裏法面の保護ブロック未被覆部分の侵食や,各保護ブロック間からの吸出しによる保護ブロック裏面の空洞発生など課題が残されている.また,北海道や青森県等では,使用方法が定まっていないホタテ貝殻が沿岸域に野積みされ,悪臭等の環境問題が生じている.以上の課題に対し,本論文では堤防の裏法面浅層部または保護ブロック裏面に破砕貝殻層を敷設すると,越水に対する侵食および吸出し抑制効果が発揮されることを実験的に明らかにした.