2022 年 78 巻 2 号 p. I_31-I_36
親潮と黒潮が衝突する潮目に近い岩手県沿岸海域は,高い漁獲量を誇る貴重な場所となっている.特にウニ(Mesocentrotus nudus)や昆布(Saccharina japonica)の生産が盛んで,昆布は藻場を形成するとともに生物多様性の維持と海洋環境の保全に重要な役割を果たし,浅瀬の生態系を支えている.しかし,2011年東日本大震災による海底の地盤沈下は,漁場に甚大な被害を与えたのみならず磯焼けが継続し,漁獲量は年々減少傾向にある.さらに,漁業従事者の高齢化と減少も漁業生産性に深刻な問題を呈している.
本研究では,ウニによる昆布の初期食害抑制技術の開発と農林水産省が定める費用対効果と昆布床を造成することによるウニと昆布の共生技術の効果を検証した.また,高齢の漁業者にも安全に操業可能な漁場の創出とAIによるウニの生息密度に対する昆布の浮上式増殖基質の効率的な投入方法も提案する.