2022 年 78 巻 2 号 p. I_655-I_660
干潟域では底生微細藻類が主な基礎生産者であり,その光合成は光合成有効放射(PAR)の量で制限される.底生微細藻類の基礎生産量に関する研究の多くが,実環境で培養する現場法であり,誤差を含む可能性が高い.一方,人工光を照射した条件下で培養するタンク法は,物理現象に伴うPARの変動を再現できる. 本研究では,2021年10月を対象に,有明海に面する緑川河口干潟の2地点で, タンク法で基礎生産量を定量した.さらに,大潮に相当する現場法が実施可能な日の基礎生産量と基礎生産量の月間平均値を比較し,現場法の代表値としての妥当性の検証を目的とした.観測を実施した2地点において,全16ケース中2ケースを除いて誤差が10%を超えたことから,現場法による見積は月間の代表値として妥当ではない可能性が示唆された.