2022 年 78 巻 2 号 p. I_661-I_666
長崎県島原半島東部沿岸域は,アサリ浮遊幼生の着底場として推定されているが,波浪等の影響により,着底したアサリは成長過程で消失している.当該沿岸域中央に位置する猛島海岸もアサリの漁獲資源が形成されない未利用漁場であり,アサリ生息調査も行われていなかった.そこで,本研究では,同海域での初期稚貝生息量を把握するとともに,アサリの漁獲資源形成を目的として砂利入り網袋を用いた実験を行い,網袋を継続的に設置することによる成貝の確保を試みた.その結果,当該海岸の初期稚貝生息を確認し,網袋を17ヶ月設置することで,成貝が200~600個体/m2程度確保できることを経年的に確認した.このことより,当該海岸を含めた島原半島東部沿岸域においてアサリ漁場形成のポテンシャルが確認され,網袋を用いたアサリ漁業の構築が期待される.