2022 年 78 巻 2 号 p. I_757-I_762
わが国の海水浴場では,毎シーズン2,000~3,000件の溺水事故が発生している.溺水事故防止には,海岸利用者自身が海の危険性を正しく認識し,危険回避することが求められ,この方法として海水浴場ではその日の遊泳に関する危険度を,遊泳条件フラッグを用いて三段階(三色)で海岸利用者に知らせている.しかし,遊泳条件は,気象海象状況からライフセーバーや海水浴場開設者が主観的,経験的に決定しており,過去の溺水事故の特徴が考慮されていないなど,決定方法に課題がある.そこで本研究では,遊泳条件をその日の溺水事故発生確率に基づいて客観的に判断する手法を検討した.溺水事故発生確率を高い精度で予測できるAIモデルを構築したことで,適切に遊泳条件を判断でき,多くの溺水事故を未然に防ぐことが可能であると考えられた.