抄録
貯水池土砂管理の現場において,集中豪雨に起因する大規模土砂流入は,最重要課題の一つであり,豪雨時の貯水池への土砂流入量予測の精度向上が望まれる状況にある.本研究では,筆者らが構築した降雨条件と斜面の安定性から斜面崩壊発生を判断する分布型土砂流出モデルを基本として,DEMの情報に基づいた新たな斜面崩壊条件の設定方法を提案した.さらに,開発モデルを土砂生産量が多い矢作ダム流域(504.5km2),美和ダム流域(311.1km2),小渋ダム流域(288.0km2)の3流域へ適用した.その結果,空中写真判読による実績崩壊地分布に対して,渓流単位などの局地的な再現性には向上の余地があるものの,流域規模での崩壊特性を精度良く再現でき,貯水池土砂流入量予測への応用が可能であることを示した.