2020 年 76 巻 1 号 p. 98-112
現在,水防災意識社会の実現に向けて,洪水時の避難行動に結びつく洪水ハザードマップの作成・改良が求められている.本研究では,洪水災害に関する住民理解を促進し自主的な避難判断を導く上で,想定最大規模の水害を想定した現行のハザードマップの課題を検討する.その上で,その課題の克服を目指して,地域におけるゾーン毎の水害条件を明記した「ゾーン別ハザードマップ」を提案・開発し,愛媛県西予市野村地区の住民を対象として,その提示効果を検証した.その結果,ゾーン別ハザードマップの閲覧を通じて,洪水災害の条件に関する理解度が高まる効果が確認された.一方,洪水時の避難判断に関しては,ハザードマップ閲覧による直接的な効果は確認されなかったが,洪水災害への理解を介して間接的な効果を持ち得る可能性が示された.