2014 年 70 巻 3 号 p. 463-473
地震動位相を線形位相遅れとそれからの変動部に分解したときに,波動が伝播する媒質の不均質性に内在する自己相似性が,位相変動部における低振動数側での位相の増加傾向と高振動数側でのそれとの間に相似性を発現させるという仮説を立て,それから必然的に導出される位相の確率特性を数理的に明らかにし,最も単純な場合に,それが非整数ブラウン運動過程としてモデル化できることを示す.この結果が,実地震動位相の解析を通してこれまで得られている知見と一致していることを述べた上で,地震動位相の不確定性が地震動振幅の減衰特性として評価できること,さらに,単純な断層破壊過程と局所的地盤伝達関数を用いた強震動模擬モデルを利用して,位相の不確定性が強震動の振幅特性に及ぼす影響をHurst指数により定量的に評価できることを示す.