JS divergenceを用いた地震動波形のクラスタリング手法のスペクトル適合波への適用性

抄録

　耐震設計用地震動として地震動の集合を代表する波形を用いることが考えられるが，性質の大きく異なる波形群を1つの波形に代表させることは合理的ではない．この問題を回避するために，本稿は波形群を性質の類似度に応じて分類する手法を提示し，応答スペクトル適合波の集合に適用した．地震動波形の性質を，パラメタを確率変数とした非線形構造モデルの応答値の確率分布を用いて表現し，確率分布の非類似度を定量化するJensen-Shannonダイバージェンスによって波形間の非類似度を評価する．また，波形群の分類には，階層型クラスタリング手法を用いる．提案手法を設計用応答スペクトルに準拠した波形の集合に適用し，手法の妥当性の検証を行った．数値解析の結果，提案手法により時刻歴波形の類似した地震動波形が優先的に併合され，簡易な非線形応答値に基づくクラスタリングによって対象構造物に与える総入力エネルギーについて同程度の値を有する波形のグループに分類することができた．また，クラスター数を増やしていくと，対象構造物に与える応答値が他の波形と大きく異なる波形や，構造物特性が想定からずれた時の応答特性の変化が他と異なる波形など，特異性を有した波形を検出して独立したクラスターとして分類する，提案手法の有効性を示す結果を得た．