土木学会論文集A1(構造・地震工学)
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ISSN-L : 2185-4653
地震工学論文集第34巻(報告)
石巻市門脇・南浜地区の事業所と住民の津波避難行動
後藤 洋三
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2015 年 71 巻 4 号 p. I_930-I_942

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抄録
 宮城県石巻市の南西部,石巻湾に面した地域の中で2011年3月11日の東日本大震災による人的被害が比較的大きかった門脇町,南浜町,雲雀野町とその隣接地区に注目し,事業所と住民の避難行動を比較的に調査した.対象地区内の多くの事業者は秩序ある避難に成功していたが,住民は20%以上が避難せず,避難した人も一部は高台に上がらす津波が来るまでに引き返すなどして混乱した.著者は自らの調査資料と著者が幹事を務めた東日本大震災津波避難合同調査団(山田町・石巻市担当チーム)の調査資料から,代表的な事業所と住民の避難事例を比較し,上記の違いを招いた要因を分析した.その結果,多くの事業所では責任者が明瞭に避難を決断し,日頃から避難場所と想定していた高台におおよそ訓練通りに避難していた.一方,この地域はハザードマップで津波浸水域に指定されておらず,津波対象の避難訓練も無く,住民の津波に対する警戒心は希薄で避難の際のリーダ的存在もいなかった.また,ラジオによる断片的な情報以外に大津波の接近を具体的に知るすべも無かったことなどが要因となったと推定された.
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© 2015 公益社団法人 土木学会
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