抄録
地震動位相の微分可能性に関する理論的考察と,群遅延時間の数値計算法に関する検討を行った.地震動のフーリエ変換F(ω)から計算される位相θ(ω)は,アンラップ操作による不連続以外にも,ωの増加と共にF(ω)が複素平面上の原点を通過するとき微分不可能となる.数値計算上は,F(ω)がちょうどゼロとならない場合でも,複素平面上でF(ω)が原点に接近するとき,位相差分および群遅延時間の数値計算結果は不安定となる.数値的不安定への対処方法として,従来の群遅延時間に対し,フーリエ振幅スペクトルの自乗を乗じて補正した補正群遅延時間を用いることを提案した.補正群遅延時間はF(ω)がゼロとなる周波数でも定義可能であり,その差分近似はF(ω)が小さな値をとる場合も数値的に安定している.