2017 年 73 巻 1 号 p. 259-277
実物大 PHC杭に対して,これまで行われてこなかった地震時の地盤変位を考慮した逆対称曲げモーメント分布となる載荷方式で,直接引張および低圧縮軸力を作用させた実験を,正負交番載荷を含め行った.また,ひび割れのような不連続現象を直接的に評価可能な剛体バネモデル(RBSM)を用いてPHC杭をモデル化し,その適用性を実験との比較で確認した.そして,その解析手法による数値実験を行うことで,軸力,せん断スパン比,杭径(径厚比),らせん鉄筋,繰返し変位振幅が終局せん断耐力に及ぼす影響を考察した.実験および解析結果から,対象としたPHC杭は,最大耐力まで十分な軸力保持性能を有し,軸力によるせん断耐力の変化が既往設計式より大きくなること,引張や低圧縮軸力下では安全裕度が小さくなる可能性があることが示された.