抄録
地表地震断層ごく近傍における震動被害が軽微と思われる事例が,2016年熊本地震など国内外で散見される.そこで,3次元差分法によって震源断層近傍域を含む地震動分布のシミュレーションを実施した.横ずれ断層では,水平方向への破壊伝搬によって断層端部直上付近で断層直交方向のパルス波が卓越することが一般に知られているが,鉛直方向の破壊伝搬によって断層近傍で断層平行成分が卓越する場合もある.そのため,破壊伝搬様式が異なる計算結果を比較し,横ずれ断層近傍の地震動を定性的に説明する震源破壊様式を検討し,断層直上における地震動を評価した.その結果,断層直交あるいは平行成分の地震動が大きくなる場所,また断層直上で地震動が著しく小さくなる場所があること,それらの位置関係が観測事例とも整合することを示した.