2019 年 75 巻 3 号 p. 336-349
2011年東北地方太平洋沖地震が発生し,耐震設計において「想定外」の巨大地震にどう対処するのか議論が進められるようになった.2012年9月に改訂された鉄道構造物等設計標準・同解説(耐震設計)では,危機耐性という概念が導入された.しかし,危機耐性を直接的に定義し照査する体系は当時は構築されておらず,耐震構造計画における配慮事項に留まっていた.そこで,本研究は,鉄道の耐震標準で示される危機耐性Rを定量評価する方法を提案した.まず,避けたい事態(危機)とそれに至るシナリオを特定し,そのシナリオに基づき危機の回避能力を定量評価する.避けたい事態は複数存在するのが一般的なので,その危機の影響度で重み付けして足し合わせることで危機耐性Rを定量評価する.また,簡単な事例を用いて試計算を行い,手法の有効性を示した.